Z3 Compactを自転車に取り付けるホルダを3Dプリンタで作ってみよう

スマートフォンを自転車に固定するマウントを買ったんですが、そのクランプ部分を使いまわすといろいろなモノを自転車に付けられるなぁと思っていました。クランプはボールジョイントになっています。3DプリンタでZ3 Compact専用のホルダーを作ってみました。





スマートフォンを自転車に取り付けるマウントを購入しました。
スマートフォンを自転車に固定するスマホマウントを買ってみた


これで十分な用を成しているのですが、このマウントを購入したのはクランプ部分の使いまわしができそうだったからです。
3本の爪でハンドルバーを鋏みこむ事ができます。自転車だけではなく汎用的なクランプとして使えそうです。そして、スマートフォン以外の物も取り付けられたらいいなぁと。



このスマートフォンマウントは3つの部品からできています。


左からクランプ部分、ナットとスマホホルダ部分です。スマホホルダ部分とクランプはボールジョイント構造となっています。
ボールジョイントを複製すればスマホホルダ部分を自分の好きなモノに置き換えられます。

どうやって? 3Dプリンタの出番です。
クランプ部分は大きな力が加わるので3Dプリンタで作るには不向きです。そこで既製品のクランプを使いたかったのです。

このスマホホルダは十分満足できる製品ですが、Z3 Compactを載せる場合には左右の抑え部分が電源ボタンと音量ボタンに干渉しそうなのが気になっています。自転車に乗っていると振動で電源ボタンが勝手に押されたりします。

まずはボールジョイント部分のコピーとZ3 Compact専用のホルダーを作ってみます。

Z3 Compact専用ホルダー部を設計する

Xperia Z3 Compact専用とするのですが、スマートフォンのケースを付けて使っている方も多いでしょう。微妙にサイズが異なるケースの厚みを吸収する構造は面倒すぎます。私が使っているクリアケース専用のマウントを作ります。サイズに汎用性があればSTLを公開してもいいんですけど、あまり汎用性のある設計にはなっていません。

設計に使うCADはFreeCAD(http://www.freecadweb.org/)です。

ボールジョイントのボールの直径は約16mmでした。3Dプリンタで造形して実物に合わせて直径を調整します。今回は16.2mmにしました。もう少し大きくて良かったかも。

ホルダーの構造はSteel Metal Workbench(http://theseger.com/projects/2015/06/sheet-metal-addon-for-freecad/)を使って作りました。厚さ2.5mmの板を折り曲げた構造にしてスマートフォンを挟み込みます。

という事でこんな形にしました。


スマートフォンを下側で支え、左右の固定は上の方で支えます。電源ボタンと音量ボタンを塞がないためです。
ボールジョイントを球と円柱で作ってくっつけます。
本当は板の部分をメッシュ状に穴を空けてプラスチックの節約と見た目のカッコよさを追及したいところですが、肝心のプリントがうまくいく気がしませんのでやめました。

モデルに強度を持たせる配向する(Orientation)

今回のプリントはSIMPLIFY3Dを使います。不満もありますが今のところ一番融通が効くでしょうか。

3D CADの設計だけなら好きに描けばいいだけなのですが、3Dプリンタで造形するとなるとデザインに制約が出てきます。

私が最近こだわっているのがモデルをプリントする際のモデルの設置向き、配向です。

今回のモデルをプリントしようとするとスマホホルダ部の板の部分が水平になるような向きに置いてしまうのではないでしょうか?その方が板の造形が速いですし、プリントする高さも低くて済むのでさらに早くプリントが完了するでしょう。

もしもそんな配向を考えているなら、今回のモデルは設計ミスです。こんなモデルでは実用になりません。
3Dプリンタは薄い層を何層も重ねて形を作っていきます。その層と層との接着はとても弱く簡単に剥がれてしまいます。
ボールジョイントの円柱部分とスマホホルダの板の接続部分を見てみましょう。スマホホルダの板を水平にしていると、円柱と板は異なる層でプリントされてしまいます。層と層の接着力だけでくっついているのです。こんな物は簡単に折れてしまいます。自転車の振動に耐えられるものではありません。
同じようにスマホを鋏みこむ折り曲げた板部分もベースの板から簡単にもげてしまうでしょう。

これを避けるにはモデルの設計変更が必要です。ボールジョイントの円柱と板の接触面積をもっと増やしたり、板厚を厚くする必要が生じます。

しかしこの問題は配向によってある程度緩和できます。モデルの力が加わる場所の検討はある程度付けられるでしょう。その力が加わる場所が層と層に分かれないようにしてやれば良いのです。
関連記事:MeshmixerのOrientation(向き)を使うと綺麗にプリントできるモデルの向きがすぐにわかって便利です

と、写真も無く文字だけでは何を書いているか判らないことをダラダラ書いてしまいました。

今回の配向はこのようにしてみました。


斜め、斜めに。
ボールジョイントの円柱とホルダの板部分は同じ層でプリントされます。つまりほぼ一体化したプリントになるため折れる事はほぼなくなります。スマホを支える下と左右の支えもベースの板と一体化します。
オーバーハング部分がほぼ無くなります。そのためサポート材の量を最小限に抑えられます。
斜めにすることで層と層の間の接触面積が増えます。その分、強度が上がり曲げに強くなります。

造形する

それではプリントしてみます。層厚は0.2mmです。スライスした予想時間だと3時間弱かかります。

が・・・

造形に4回失敗してしまいました。しばらく3Dプリンタを触っていなかったらもう勘所を忘れてしまいました。
ん?ラフトがベッドから浮いてる。どうもベッドへの定着が弱い部分があるようです。モデルの造形場所を移動して弱い部分を回避します。
サポートの密度が低すぎてサポートが折れてしまいました。以前の試行錯誤の結論の値を安易に変えてしまい失敗です。
鋭角な部分があると反りが生じてヘッドがぶつかってしまいます。そして、ヘッドの位置がズレてしまいぐちゃぐちゃに。デュアルヘッドは面倒です。そんな場所はサポート材で補強します。SIMPLIFY3Dのマニュアルサポートが無ければプリントをあきらめてしまうでしょう。
あれ?X軸が動かなくなった? X軸ケーブルの接触不良が起きました。以前も一度起きたんですよね。コネクタの接触がイマイチのようです。
もう大丈夫だろうと放っておくとなんかトラブりますね。

と、こんな感じで8時間ほどかかりました。ホント疲れる。

それではプリント結果です。まずは表側です。


そして裏側。


ボールもちゃんとできてるようです。

サポートのプリントに失敗している場所がありますね。


斜めになっている面にサポートを載せていかなくてはなりませんが、うまく載らなかったようです。モデル本体に大きく影響を与える事はなかったようなので今回は良しとします。
この問題は良く起きるのですが良い解決方法が思い浮かびません。小さな部品が宙に浮いてる時に困るんですよね。

サポート材を取って組み立てる

サポート材を取って簡単にヤスリがけしてみます。
表面です。

裏面です。


サポート材の上にプリントされる球が少しいびつになります。どうしてもサポート材の上は形が崩れます。
輪郭を細かく見るとモデルを再現できていないところがあります。オーバーハング部分の精度は悪いですね。
まぁ実用上問題がない部分ばかりなので。

さて最も重要なボールジョイントが機能するでしょうか。付けてみます。


少しボールの直径が小さかったようですが、固定できそうです。

そしてスマホがちゃんと入って落ちない事を確認します。


大丈夫そうです。スマホを入れるのに力をそこそこかけますが脆い所はないようです。配向によってはこの時点で折れてしまう部分が出るでしょう。

これで今回のモデルは完成です。実際に自転車に載せて走り強度の確認をしたいと思います。強度の目途がたったらもう少しデザインにこだわってみようかな。

今回はZ3 Compactという小型のスマートフォンを載せました。実はZ3 Tablet Compactも載せたいなぁ・・・なんて思ってんす。モバイルバッテリーを固定する場所も欲しいですね。まぁ、Pokémon GOもそれほど動かさなくなったので需要が無くなってしまいましたが。

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